いつかは泊まってみたいと思っていた宿坊。
それならいっそ本格的にと、世界遺産・高野山へ。
東京からの一泊二日・夫婦二人旅。 宿坊での滞在時間約15時間。
忙しい現代人でも叶う、世俗を離れて自分を清め、見つめ、癒やす、お手軽な聖地巡礼旅。
お寺に泊まれるの? 食事は? お部屋は? 家族や子連れでも宿泊可能? 修行って何するの? 厳しい??
お世話になった宿坊「遍照尊院」さんでの宿泊体験とプチ修行の全貌、リアルな感想をお伝えします!
高野山宿坊に遍照尊院(へんじょうそんいん)を選んだ理由
関西方面へ急に用事ができたので、ついでにどこか足を延ばそう。
そう考えて思いついたのが高野山。
どうせ高野山に行くなら、一度、宿坊に泊まってみたい。
- お部屋はトイレがついているほうがいいな
- 綺麗なお部屋がいいな
- 食事の評判のいいところがいいな
- 面白そうな修行体験ができることろがいいな
ナヌナヌ、高野山で唯一の「壇上伽藍ナイトツアー」を催行してる宿坊か。 おもしろそう!
そこから、各旅行サイトや口コミを調べて、評価の高い「遍照尊院(へんじょうそんいん)」さんにお世話になることにしました。
高野山宿坊体験の1泊2日のスケジュール
忙しい人でも大丈夫。 高野山での宿坊体験、1泊2日のスケジュールはこちら↓
1日目
午前中はお仕事してきました。
高野山に入る前に、「室生寺(むろうじ)」に。
女人高野と呼ばれる、この地にも行ってみたかった。
近くにある「室生龍穴神社」や「室生龍穴神社奥宮」には何度も行っているのに、1km未満で行けるこのお寺はなぜか訪ねたことがなかったんですよね。
しかし、タイムスケジュール的にはキツキツでして。
甘かった…
事前知識0で行ったもので、お寺が一つだけあるもの、とばかり思っていたんですよね。
予定していた30分ではとても拝観しきれない広さ。奥之院どころか、五重塔へ行くのも断念しました。
きちんと拝観するには所要時間1時間30分~2時間程度は必要ですね。
引用:室生寺
【水の神がおわします祈雨の聖地】には、また改めて、ゆっくりご挨拶に参ります。
16:50 宿坊「遍照尊院」 到着
名 称 | 高野山 遍照尊院 (こうやさん へんじょうそんいん) |
所在地 | 〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山303 |
連絡先 | TEL 0736-56-2434 FAX 0736-56-3641 |
宿泊代金 | 15,400円 ~ 24200円 標準プラン 1室2名利用時(1泊2食付・大人1名あたりの税込価格) ※価格はプラン、1部屋の利用人数によって変わります。詳細は遍照尊院様へお問合せください |
チェックイン15:00 (最終チェックイン:20:00) チェックアウト 10:00 門限22時 | |
駐車場 | 15台(予約時に確認) |
壇上伽藍 徒歩1分 ファミリーマート 徒歩2分 |
食事については、この記事の後半で紹介しています。
実は「写経」は少しだけ馴染み深く、お寺での体験や、写経セットを買ってたまに自宅でも行っていたんですよね。
でも、場の力というのでしょうか。この真言宗の聖地で行う写経は自然と心が落ち着いて、いつの間にか頭空っぽで集中できていたような気がします。
写経には
・脳の活性化
・精神の安定
・免疫力UP
などの効果があるといわれています。276文字の般若心経を一文字一文字丁寧に書くことで得られる心の平安。時間に追われる現代人にとって、なんとも贅沢でスペシャルな時間でした。
この宿の決め手だった「壇上伽藍ナイトツアー」。
宿に到着して聞いてみると、な、な、なんと、この日はご案内して頂く副住職様がおられず、催行無しとの事。抜かった。事前に確認すれば良かった…(思いつき旅の醍醐味は予定通りにいかないことですねぇ)
気を取り直して、セルフで行ってきました。
「遍照尊院」から壇上伽藍までは、徒歩1分。
立地的には、ほぼ目の前。めちゃくちゃ近いです。
ライトアップされているので、すぐにわかります。
壇上伽藍(だんじょうがらん)
お大師さまが高野山をご開創された折、真っ先に整備へ着手した場所です。お大師さまが実際に土を踏みしめ、密教思想に基づく塔・堂の建立に心血を注がれました。
〈胎蔵曼荼羅(たいぞうまんだら)〉の世界を表しているといわれています。
高野山全体を金剛峯寺という寺院と見たとき、その境内地の核にあたる場所で、古来より大師入定の地である奥之院と並んで信仰の中心として大切にされてきました。
引用:高野山真言宗 総本山 金剛峯寺 (こんごうぶじ)
大塔や鐘など、一部ライトアップされていましたが、他の見どころなどは暗闇に紛れているので、昼間にまた改めてですね。
壇上伽藍には諸堂をめぐるおすすめの順番があり、それに則ると良いそうです。
中門→ 金堂→ 登天の松と杓子の芝→ 六角経蔵→ 御社→ 山王院→ 西塔→ 孔雀堂→ 逆指しの藤→准胝堂→ 御影堂→ 三鈷の松→ 大塔→ 対面桜→ 大塔の鐘・高野四郎→ 愛染堂→ 不動堂→ 勧学院→ 蓮池→ 大会堂→ 三昧堂→ 東塔→ 智泉廟→ 蛇腹路→ 六時の鐘
『両壇遶堂(りょうだんにょうどう)次第』
敷地内は誰もおらず、私達だけ。
シンと静まり返った境内に、夜のお勤めなのか、お経が響いてきます。
この感覚、この空気感、どこかに似てる…どこだったっけ…?
ああ、モン・サン=ミシェルだ。
真冬の雪の舞うモン・サン=ミシェルを訪れ、修道院のテラスから四方に拡がる海を眺めた時。
あまりに荘厳で、ずーっと、その場に佇んでいた。
どちらも巡礼地であり聖地であり、世界遺産。古来からの祈りの地は場のエネルギーも似通うものかもしれませんね。
とはいえ、冬の初め、標高867m、山の上はかなり冷えました。お宿が近くて良かった…
お風呂については、この記事の後半で紹介しています。
お部屋にはTVがありましたが、せっかくなので、デジタルデトックス。静寂の空間を楽しみ、翌日6時からの朝のお勤めに参加する為に早めに就寝。
2日目
本堂で行われる朝の勤行に参加。
早朝の寒さに耐えられるのか…と背中にカイロを貼り付け挑むも、なんとお堂内は私達に向けてヒーターが設置されていました。ありがたい。
また、脚の悪い方でも大丈夫なように椅子が完備されていて、正座で足が痺れて大変、なんてことも無い。
至れり尽くせりで、朝の厳かで特別な時間を過ごすことができました。
勤行後は、希望者のみ、お砂踏み体験を。別部屋へ案内され、四国八十八ヶ所霊場の砂が並べられた上をフミフミ。
「同行二人」。お大師様といつもご一緒に。手をあわせながら歩きます。
八十八ヶ所を実際に歩く場合、その距離は1200~1400kmともいわれています。四国巡礼のプチプチ体験。有難い事です。
食事については、この記事の後半で紹介しています。
寺内を軽く散歩し、8:20 車で奥の院へ
高野山の二大聖地の一つ「奥の院」へ。
まだ早い時間だったので、ほぼ人もおらず、シンと静まった道を進みます。
一の橋から奥の院までの約2kmの道の左右には大小様々な供養塔が並んでいます。
豊臣家、徳川家などの墓石、武田信玄、上杉謙信、伊達政宗などなど… 織田信長のお墓は少し奥まったところにあるので見落とし注意。
歴史の本で見た武将や貴人のお墓がずらりと並び壮観。都度、立ち寄って確認しちゃうので、なかなか先に進みません。
歴女にはたまらん。
水向け地蔵
地藏菩薩、不動明王、観音菩薩など、お像が並んでいます。
御供所で水向塔婆を買い、納めさせて頂きました。それぞれのお地蔵様にお水をかけていき、先祖の冥福を祈りました。
その後、玉川、御廟橋と進み、燈籠堂へ。そこは聖域中の聖域。
一般参拝者は、こちらでお参りです。(写真撮影禁止)
燈籠堂は、たくさんの燈籠が奉納され、灯火は1000年の間絶えることなく受け継がれているという、高野山の長い歴史を感じる荘厳な場所。
燈籠堂の裏にまわって、御廟の前でお参りもさせて頂きました。
子供の頃、お大師様のふもとで育ち、菩提寺も真言宗の私にとって、こちらに詣でることができたのは、なにより得難い経験でした。
…それにしては、駆け足だったので…
次回は見どころたっぷりの高野山&宿坊をゆっくり再訪したいと思います。
奥の院から、熊野速玉大社へ向かいました…
遍照尊院で叶う5つの修行体験
阿字観瞑想
時 間:18:45~
所要時間:45分程度
料 金:1人1,500円
真言宗では伝統的な呼吸・瞑想法を、「阿字観」と呼びます。
「大日如来=宇宙」と一体になることをイメージし、梵字(ぼんじ)の「阿」の字を見ながら呼吸を整え、心を落ち着かせていきます。
写経
時間:19:30~・8:30~
所要時間:60分程度
料 金:1人 1,000円
心静かにお経を書き写します。
一心に打ち込むことで日頃のストレスやイライラ、雑念も払われ、心が落ち着き、集中する時間。写経は本堂に奉納して頂けます。
写仏
時間:19:30~ 8:30~
所要時間:60分程度
料 金:1人 1,000円
写仏とは仏様の下絵の上に薄紙を重ね、筆で写し描くことです。
仏様を描き、親しみながら、自分の心の乱れや自分自身と向き合う時間は何にもかえ難いひとときです。写仏は本堂に奉納して頂けます。
お砂踏み
所要時間:10分
金 額:1人300円 ※宿泊客は無料
四国八十八ヶ所霊場のお砂踏み体験。高野山では「遍照尊院」のみで体験できます。
壇上伽藍ナイトツアー
時 間:19:45~
所要時間:75分程度
料 金:1人1,500円
副住職自らにご案内頂けます。高野山では「遍照尊院」のみで催行されているそうです。
5つの修行体験は、日によって、催行されない日があります。
私が宿泊した日は、お目当ての「壇上伽藍ナイトツアー」がお休み。
「阿字観瞑想」は食事の時間の関係で、できませんでした。
これは絶対ハズセナイ!という体験があれば、事前に問い合わせをして、時間の調整をしておけば、効率よくプチ修行体験が出来ると思います。
宿坊『遍照尊院』のお部屋・食事・お風呂について
実際に私が体験した「遍照尊院」のお部屋・食事・お風呂について
お部屋について
引用:高野山 遍照尊院
バス無しトイレ付の新館のお部屋に泊まりました。
窓から見える景色も美しく、アメニティも基本的なものはほぼ完備。トイレもウォシュレット付き。ドライヤーもちゃんとありますよ。
正直、ちょっとした旅館より清潔で整えられていて、宿坊の概念を覆される、素敵なお部屋。
ただ、ただ、これはお宿のせいではないですし、建物の造りや高野山の冬の厳しさの問題ですが……
寒い!
感染症対策なのか、修行の一環なのか、廊下はところどころ開け放たれていたのもあるかと思いますが。
部屋は個別に空調があり、とても暖かだったのですが、夜中、寝ている時に底冷えするというか。背中側からゾクゾクッと芯から冷える感じがあります。
11月の終わりでこれなら、真冬はとんでもなく寒そう。さすが、山の上ですね。逆に夏の暑い時期は涼しくて快適でしょうね。
昔の修行者の冬の厳しさを、ほんの一端ですが、垣間見ることができる良い体験でした。
食事について
夕食は、18:00からスタート。
食堂にて頂きます。足の悪い方でも座りやすいテーブルのお席。
13品の精進料理。左上のお鍋は味噌煮込み鍋、これに、後から持ってきて頂いた温かいもの。お蕎麦、天ぷら、ご飯。果物のデザートも。
思ったより濃くて甘みもある味付け。
精進料理というと味気ないんじゃないか? 量が足りないんじゃないか?…というイメージがあるかと思いますが、そんな心配は皆無。
肉や魚などの動物性たんぱく質はありませんが、土地の恵みのお野菜や植物性のものだけで作られたお料理はその品数もあってボリュームたっぷり。
植物性のみの食事は消化が早く、胃の負担も軽くて、なによりヘルシー。
精進料理を食べた事がない方、男性の方にも、目からうろこ、満足して頂けること、うけあいです。
翌日、身体が軽いですよー。
朝食は、朝の勤行後、窓から見える美しい景色を眺めながら。シンプルイズベスト!
どこから聞こえてくるのか鐘の音が響き… 和みます。
普段、朝食はとらないけど、旅路の朝御飯は欠かせませんね。
お風呂について
入浴時間 16:00~23:00
お風呂は日替わりで、古代檜(1階)と高野槇(2階)の浴槽。男女で入れ替わります。
この宿坊の最大の魅力は、このお風呂かもしれない…!と思うほどの、素晴らしいお風呂。
こちらの大浴場は高野山の宿坊の中でも一番の大きさ。
私の時は1階の古代檜のお風呂だったのですが、ちょっとした温泉旅館以上の広さのある大浴場。
この日は他にお客さんがおらず、大浴場を独り占めしちゃいました。
そして、特質すべきは、薬湯風呂。浴槽に書いてある説明文には陀羅尼(だらに)風呂と書いてあった気が。
この土地の名物、陀羅尼丸と薬草の調合などが関係あるのかな?
薬草の成分がこれでもかと出ていて、湯の色も濃い。煎じられた香りがあたりに立ち込める。あぁ、身体の芯から温まる…。これはスゴイ。
薬湯風呂は2~3人入れるかな、ぐらいの小さな浴槽ですが、本当に素晴らしいお湯ですので、こちらにお泊りの際は、ぜひぜひ楽しんでみてくださいね。
宿坊だけに当然ですが、朝風呂に入れないのが実に残念な、素敵なお風呂でした!
高野山宿坊は家族や子供や女性一人でも泊まれる?
高野山の宿坊は、家族や子供や女性一人でも宿泊できます。
私が訪ねた時にみかけたのは、私達のような夫婦二人旅、女性二人旅、ツーリングの男性一人旅の方。
「遍照尊院」では、一人からでも宿泊可能です。
小さなご家族連れでも安心のトイレ・お風呂付のお部屋もあり(もちろん、鍵も閉まります)3世代で泊まられる方も多いそうです。
また、宿坊によっては、社員旅行や学生旅行など合宿、研修目的の大人数グループ客を受け入れているところもあります。
(「遍照尊院」には、天皇陛下が学生の頃にグループで訪れた写真が飾ってありました!)
是非、各宿坊に問い合わせてみてくださいね。
まとめ
今回は、宿坊に泊まるをメインに、高野山へは本当に短い時間の滞在になりましたが、そんな中でも「写経体験」「お砂踏み」「朝の勤行」「精進料理で身体の中からの整え」「デジタルデトックス」などなど、
普段では味わえない非日常的な時間を過ごすことができました!
お部屋も、鍵あり、トイレあり、場所によってはお風呂付のお部屋もあり。身体の芯から温まる大浴場もあり。
お寺だけあって、隅々まで清浄で清潔な空間でした。
「宿坊ってなんだか厳しそう」そんな概念が崩れる、宿坊体験。
高野山のご神気を頂き、四季それぞれの魅力を味わう。ゆったりとした時間がしぜんと日々の疲れを癒やしてくれる。
1200年の間、変わらず続く天空の聖地で、自分を清め、見つめなおす。
そんな特別な時間を、みなさんもぜひ体験してみてくださいね。
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