INTRODUCTION

Introduction イントロダクション

あなたは、知っていただろうかー。ナチスによるホロコースト以前に150万人が虐殺された悲劇の存在を

人類史上最悪の悲劇とされる“ホロコースト”が始まる約20年前に、150万もの人々が犠牲になったジェノサイド(大量虐殺)があった。オスマン帝国(現在のトルコ共和国)によるアルメニア人の大量虐殺事件である。『THE PROMISE/君への誓い』は、語り継がれるべき負の歴史に翻弄された3人の男女の姿を追った壮大なヒューマンドラマだ。

トルコ南東部のアルメニア人の村に生まれ育った青年ミカエルは、医師を目指して首都コンスタンチノープル(現 イスタンブール)の大学に入学。裕福な伯父の家に下宿して、華やかな都会暮らしを味わう。さらにアメリカ人ジャーナリスト、クリスの恋人でフランス育ちのアナとも惹かれ合うようになるのだが、第一次世界大戦の足音とともに国内でアルメニア人への弾圧が強まり、拘束されて強制労働に送られてしまう。からくも脱走に成功し、故郷へと向かったミカエルが目撃したものとは?そして思わぬ再会を遂げたアナとの未来はあるのか?

現実に起きた“20世紀最初のジェノサイド”に正面から向き合ったのは、ルワンダ虐殺の真っ只中で人命を救うために尽力したホテルマンの実話を描き、日本では劇場公開を求める署名運動まで巻き起こった『ホテル・ルワンダ』の名監督テリー・ジョージ。一流の脚本家としても知られ、悲劇を前に葛藤する人間を描き続けてきた才人が、いま再び歴史的な惨劇に光を当てて深い感動を呼び起こす。

主人公の医学生ミカエル役でナイーブな魅力を発揮するのは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』から『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』まで、規模の大小を問わず大活躍を続けるオスカー・アイザック。運命の女性アナにはカナダ出身でフランスを拠点に活動する『イヴ・サンローラン』『ザ・ウォーク』の才媛シャルロット・ルボン。そして人道派のジャーナリスト、クリスを『ダークナイト』三部作の“バットマン”として知られ、『ザ・ファイター』ではオスカーを受賞したクリスチャン・ベイルが扮している。いずれも切実なテーマに共鳴し、旬の実力派キャストの豪華共演が実現した。

さらにフランスからジャン・レノ、アメリカからジェームズ・クロムウェルと大ベテランの名優が参加。それぞれに実在したフランス海軍提督とアメリカの外交官を演じ、物語に重厚さを与えている。

20世紀初頭のコンスタンチノープルを再現したエキゾチックな街並み。狂おしくも切ない3人の男女のラブストーリー。そして史実に基づいて描かれるアルメニア人の決死の抵抗と、彼らを救い出そうと奔走する諸外国の動き。壮大なスケールで歴史のうねりを感じさせると同時に、ファンタジックな映像美が信念と愛のドラマを鮮烈に浮かび上がらせる。

アルメニア人の苦難は現在のトルコ政府が虐殺の事実を認めていないことから、政治的タブーとして表立って語られることが少なく、多くの人にとって“知られざる歴史”であり続けてきた。映画の世界ではアルメニア系カナダ人のアトム・エゴヤン監督が『アララトの聖母』、ドイツのファティ・アキン監督が『消えた声が、その名を呼ぶ』で同事件を扱っているが、アキン監督はトルコ系でありながらもトルコ政府から危険人物認定されてしまったという。

本作もまたハリウッド大作として製作にこぎつけるまでには幾多の困難が伴い、9千万ドルの製作費の大半は、虐殺から生き延びた家族を持つアルメニア系アメリカ人の大富豪カーク・カーコリアンが個人的に捻出した。カーコリアンはプロデューサーにも名を連ねているが、本作の完成を待たずして2015年6月に98歳でこの世を去っている。

 現在も世界中で内戦や民族紛争など、人と人の争いは絶えない。なぜ、人は悲しい歴史をくり返すのか―。

『THE PROMISE/君への誓い』は100年の間、語られる日を待ち続けてきた物語。100年をかけて受け継がれてきた真実のバトンが、いま映画の観客に渡されようとしているのだ。

BG